飯沼ゆうき氏による『人の価値は身分や出自によって決まらない』というテーマで描かれた漫画です。
未だ差別がなくならないこの時代、むしろ差別をしたいがために自らを正当化する輩まで現れているこの時代だからこそ、多くのひとに読んで欲しい漫画ですね。
主人公は鈴といい、『下民』と呼ばれる最下層の人間です。
ゴミとして処分される運命にある『里』の仲間達を救うため、権謀術数を巡らせます。
必要があれば、相手を排除するのも厭わないその姿勢は残酷ではありますが、『里』という環境が過酷だったのと理解させられます。
ストーリー
『里』を守るため、身分制度を破壊して国家の基盤を作り替える。
そのためにまず士族という身分を廃止するため、廃領置州を提案し、実行させます。
廃領置州の元ネタは廃藩置県ですね。
民主主義の土台となる多数決の投票の提案など、鈴は革新的な制度を次々と発案していきます。
もちろん革新的なことを全員がすぐに受け入れられるわけではないので、反対派を説得するために鈴とイノは奔走するのが基本的なストーリーとなります。
僅か7巻で展開するため、かなりのスピード展開です。
テンポよく進み過ぎて、ここまで急激に国の制度は変わらないよなとは思います。
キャラクター
主人公の鈴の『里』の仲間を守るため、命を張る姿は好感が持てます。
手段を選ばずに屍の山を築き、明らかにいい人達も罠に嵌める姿は『里』の仲間を守るためという理由でも酷いなあと思いつつも、手段を選ぶ余裕がないから仕方ないかなとも思います。
その鈴の相棒であるイノも好きですね。
寡黙ですが、イノも『里』の仲間を救うために尽力します。
維新を成功させ政府の中枢を担う十傑と呼ばれる10人の面々も、個性豊かで魅力的です。
鈴は身分制度を残している10人を嫌っていますが、彼らが鈴の提案を受け入れたから廃領置州が実施できました。
また途中で参戦する忍びのヒロイン、とちりも信念をしっかり持った良いキャラクターでした。
画力
綺麗な絵柄です。
キャラも描き分けが出来ているので、ストレスなく読むことが出来ます。
綺麗な絵柄の漫画はキャラの描き分けが出来ていなかったり、コマ割りがわかりづらいことも結構ありますが、『新世のリブラ』はそういったこともありません。
バトル描写も問題ないレベルであり、総合的にはかなり高いと言えるでしょう。
世界観
明治をモデルにして、よく練り上げられています。
最後まで淀みなくストーリーが進んだのも、構成のために必要な設定が作り上げられていたからでしょう。
オリジナリティ
『人の価値は身分や出自によって決まらない』というテーマを扱う作品は、思いつきませんね。
作中でそういうことをキャラがいう作品は沢山ありますし、よほどの差別意識がなければ『身分や出自が人の価値を決める』という漫画家はいないでしょう。
ただ、『新世のリブラ』のようにしっかりとテーマとして捉えている作品は読んだ記憶がありませんね。
子供の頃からかなり色々な漫画を読んでいますが、記憶にありません。
この漫画のオリジナリティーは『人の価値は身分によって決まらない』というテーマでしょうか。
総合評価
面白い!
絵も綺麗だし、話もテンポがよくて面白い!
キャラクターも好感が持てる人物ばかりで非常によい作品でした。
主人公の鈴が賢すぎじゃね? とか、少々ご都合主義なところもありました。
主人公の鈴が間宮という貴族の青年と瓜二つで入れ替わるのですが、ご都合主義だと思いました
国のトップが『王』なんだけど、髪の色が主人公と同じ白でした
ただその場合は作品のテーマとぶれるし、匂わせただけかもしれません
あるいは7巻で終わったけど、テーマもぶれずに納得のいく展開を考えていたのかもしれないね
面白い漫画を一気に読みたい方にはお勧めです!