ワールドエンブリオの
実は展開と単行本の刊行が遅いので、3巻まで購入していたのをブックオフに売り払ってしまったことがある作品です。
ぶっちゃけ最近まで忘れていました。
ふと思い出して、調べてみると完結しているとのこと。
続きを読んでみたらあまりにも面白くて一気読みしてしまいましたよ。
重厚な設定と凄い熱量のある作品で最高ですね。
ここまで複雑な設定をよく張り巡らせたなと驚きます。
リアルタイムで読みたかったかなという思いとともに、一気に読んでよかったかなとも思います。
とにかく設定が多くて、複雑ですからね。
伏線やらなんやらが多すぎるので、一気に読んだほうがいい気がします。
ストーリー
序盤は展開が遅いなあと思っていましたが、読み終えてみると凄く伏線が満載だったと驚かされます。
設定が多い作品は矛盾点だらけの作品になることも多いですが、この作品はそういうことは一切なく、綺麗に伏線を回収しています。
SF作品としてかなり読み応えがあります。
まさかとっくの昔に人類が滅びていたなんて、驚きでした。
携帯の着信で棺守に変貌してしまうのではなく、それが元の姿だったとはね。
知らぬが仏とはこのこと。
まあ天音の性格がもう少し違ったら、もっと円満に物事が解決したのになあと思わなくはないけれど。
キャラクター
どの人物にも読者を納得させられる理由と描写が丁寧に行われているので、好感度が高いです。
黒幕の一人である唐沢も同情できる悪役ではありました。
まあ同情できるとはいえ、こいつはやり過ぎたから死んで当然だと思いますが。
タカオも刃旗使いを狩っていた理由は納得がいきましたが、殺された人たちからすればふざけるなでしょうね。
最後は服役して罪を償っていますのは好印象かな。
脱獄しようと思えば出来るだろうに脱獄しませんからね。
画力
正直、とても好みです。
綺麗なキャラクターで構図も見やすいですし、迫力もある。
迫力を出すために絵を崩すという手法もありますが、それをせずとも迫力を出せるのが素晴らしい。
世界観
我々の必需品である携帯電話を受け取ったら、化け物に変身してしまうという設定が秀逸。
僕が中学生のころは携帯を持っている人はあまりいませんでしたが、いまでは学生の95パーセントがスマホを持っているといいますからね。
僕が学生のころとは考えられないほど変わりました。
もしガラケーやスマホが危険だから持ち歩き禁止と言われても、従わない人は多いでしょう。
生活に欠かせませんからね。
このスマホを死に至る凶器にしてしまえば……恐ろしい話です。
オリジナリティ
棺守という化け物に、刃旗使いという戦士達が戦う。
これ自体はアクションものではよくあります。
最大の特徴は携帯電話の会社が、化け物と戦うことでしょうか。
最初、携帯電話の会社が戦うとかえっ? と思いましたが、読んでみたら納得がいきました。
これは連載が長いおかげで見識が広がったおかげもあるのですが、携帯会社を作るのって凄くお金が掛かるんですよね。
最近でも楽天が携帯事業に参入すると言っていますが、必要な資金が6300億円ですよ。
新規参入のためにこれだけのお金を用意できるのだから、政府ともコネがありますよね。
時路グループは携帯事業が駄目になっても揺るがないらしいですし、どれだけ金持ちなんだか。
総合評価
重厚で熱いSF漫画でした!
それでいて笑いどころも入れてくれるところがいい。
陸と天音が剣で戦ったときに天音を「ぼっち」といって、天音が「アンタにいわれたくないわよッ」には笑いましたw
天音さん、あなたボッチなのを気にしていたんだね。
彼女がボッチだったのは深い理由があったのだと後にわかりますが、ここを読み返してみると笑ってしまうと同時に悲しくなります。
それだけ陸と天音が長い付き合いだったという証しですからね。
似たもの同士でもあります。
陸と天音のどちらも、もうちょっと素直というか他人に頼れる性格だったら事態が面倒くさいことにはならなかったと思うのですが、しかたないかな。
欲を言えば、エピローグがちょっと不満でしたね。
世界の敵になった陸が誤解を解けて、どうなるのかを描くのが本当のエピローグではないんでしょうか? 森山先生!
連載時には刊行ペースが遅くて嫌になりましたが、一気読みしてみるととても面白かったので満足しています。
完結したいまだからこそ、一気読みしてみてください!