最近、ナチス映画が増えています。
ナチス映画と一言でいっても一兵士の話から美術品を輸送する『ミケランジェロプロジェクト』、ヒットラーの暗殺計画を描いた『ワルキューレ』などの実話系のお話。
一方で『イングロリアス・バスターズ』や『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』のようにフィクションのようなものもあります。
さらに第二次世界大戦が終わった直後を描いた『ヒトラーの忘れもの』という作品もありますね。
今回書くのはある夫婦のお話です。
1940年6月、戦勝ムードに沸くベルリンで質素に暮らす労働者階級の夫婦オットー(ブレンダン・グリーソン)とアンナ(エマ・トンプソン)のもとに一通の封書が届く。それは最愛のひとり息子ハンスが戦死したという残酷な知らせだった。心のよりどころを失った二人は悲しみのどん底に沈むが、ある日、ペンを握り締めたオットーは「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」と怒りのメッセージをポストカードに記し、それをそっと街中に置いた。ささやかな活動を繰り返すことで魂が解放されるのを感じる二人。だが、それを嗅ぎ付けたゲシュタポの猛捜査が夫婦に迫りつつあった―。
ヒトラーへの285枚の葉書 公式サイト:より引用
きっかけは息子の戦死
犠牲になった息子のために
主人公の夫婦は戦争でひとり息子を失います。
ヒトラーへの怒りを募らせた夫婦は復讐を誓い、アチョーっと叫びながらナチスをバッタバッタと倒す——なんてことは普通の夫婦だから出来るはずもありませんね。
出来ることは政権を批判した葉書を置くことだけ。
しかしその葉書を出すのが命がけ
独裁国家で政権を批判することは命がけです。
ロシアでジャーナリストが何十人も殺されるのを見れば、如何に命がけの行為かがわかるでしょう。
筆跡でわからないようにカリグラフィーで書き綴り、置いているところを人に見られないように入念に注意しています。
追う刑事
この時代、警察は大変です。
ヒットラー親衛隊の高官が捜査にしゃしゃり出てきて、邪魔をしてきます。
しかも高官はまったく関係のない男を捕まえてます。
刑事が無実だと指摘したら逆ギレして逆に刑事を殴を殴り、誤認逮捕した人間を始末しろという始末。
なんという酷い時代。
しかし親衛隊に従わなければ自分も処刑されるし、無実でも捕まった男は酷い拷問にあうので殺された方がマシだといいます。
結局、誤認逮捕された男は刑事に始末されてしまいます。
結局はバレます
2年半で285枚の葉書を出しますが、刑事に判明してしまいます。
しかし2年半もあちこちに葉書を出してバレなかったというのは逆に凄いですね。
作中でも語られていますが、この夫婦は学はありませんが知能が高いので刑事の追跡を上手く逃れられたんですね。
僕だったら2年半も命がけで葉書を置くなんて出来そうにありません。
行動パターンを読まれて、お縄です。
ある意味でドイツらしい
葉書の殆どは拾った国民によって、警察に届けられてしまいます。
独裁国家だから保有していたら逮捕されるというのもあるのでしょうが、真面目に警察に届けるのが国民性を表していますね。
僕だったら届けないかな。
葉書を書いた人物だと誤認逮捕されたら嫌ですからね。
悲惨な結末
夫婦はまさかのギロチンで処刑されてしまいます。
この時代にギロチンがあるのかよ! と驚きましたが、恐怖政治の象徴ともいえるギロチンを使うのがナチスドイツらしくもあります。
ついでにギロチンがいつまで使われていたのか調べてみましたが、1981年までフランスで使われていたんですね。
たった36年前まで使われていたというのはなかなかに衝撃的ですが、ギロチンは人道的な処刑道具として開発されたので、おかしくはないのかもしれません。
本当に人道的かどうかは議論が分かれるところですが。
刑事も後を追う
自分の身を守るために、無実の男に手を掛けた刑事ですが、最後は自殺してしまいます。
この刑事は夫婦が出した葉書のほぼ全てを知っている唯一人の人物です。
一体、夫婦はどんな内容を葉書に書いたのかは興味深いですね。
あとがき
想像を絶するラストに驚愕です。
まさかここまで救いがない映画だったとは思いませんでした。
だからこそ見る価値があると思います。
葉書を置く、たったそれだけのことでも命を掛けなければいけない。
そしてそんなひとたちが戦ったからこそ、いまの我々の生活があるのだと思うと大切にしなければいけないと思わされます。