最近、流行の異世界転生物です。
ほんと増えましたよね、異世界転生や召還もの。
個人的にはあまり魅力を感じません(ファンタジー小説好きではないし)が、作者が戦記物を書かれている内田弘樹氏なので読んでみました。
やはりいいですねえ、内田弘樹氏の作品は。
軍事的な知識が豊富なので説得力がある。
ストーリー
異世界でただ一つの人間が暮らしている国——リリエンタール。
そのリリエンタールが危機的状況だから、女王であるエクレアによって勇者として召喚された二人のお話です。
ここら辺はよくある展開なので驚きはありませんね。
テンプレートな展開といってもいいでしょう。
特徴は召喚された二人が重度のミリオタであるということ。
軍事的な知識が豊富で、その知識を生かして圧倒的に不利なリリエンタールを勝利に導きます。
一時的な勝利で戦況はまったく予断を許さない危機的状況ですけどね。
大国が小国と戦って、そう簡単に撃退することは出来ません。
第二次世界大戦で中立を維持していたスイスや中東戦争で四方から攻撃されても勝利したイスラエルといった例もあるので、勝てないわけではないですけどね。
キャラクター
ミリオタだが戦争は嫌いな焼け野が原宗也とミグ。
僕もミリオタ(といっても浅いほうですが)なのでわかります。
ちなみに母親も第二次世界大戦についてあれこれ研究しているので、ミリタリ関係の知識は結構豊富ですw
ミリオタは戦争が好きだという誤解を受けるんですよね、これは作者の内田氏も日頃感じていることでしょう。
創作で戦争を楽しむのはいいけれど、本当の戦争なんて御免ですからね。
本当の戦争になったら娯楽が制限されて、まったく楽しめませんよ。
平和だからこそ、戦争を題材にした作品を思いっきり楽しむことが出来るんです。
閑話休題。
個人的に気に入ったのが敵の総司令官であるラズ。
幼女とか擬人化した美少女とか好きではないどころかかなり嫌いなんですが、副皇帝家という責任のある立場で頑張る姿は応援したくなります。
宗也に部下が司令部ごと次々殲滅されていますがw
文章
基本的には宗也の一人称ですが、ところどころで三人称も入ります。
ラノベではよくあるスタイルですね。
サクサクと一気に読めて楽しかったです。
イラスト
こういうイラストもいいですね。
メディアミックスには向いていない気もしますが。
オリジナリティ
敵の総大将であるラズを殺さずに、交渉しているのが面白いですね。
話のわかる相手は殺さずにいたほうが都合がいいのは確かです。
立場があるならば尚更。
なぜ国が戦争を仕掛けるかといえば、仕掛ける側は得だと判断するからです。
この作品は中世ヨーロッパ風の異世界なので、敵国の人間を奴隷にして自国に連れてくるのは当たり前です。
奴隷というのは安価な労働力なので、手に入れば入るほど労働力を確保できます。
逆に敵が当初の目論見よりも強く、損害が大きければ兵士という労働力が失われるので損です。
素直に侵攻を諦めるのが賢明な判断ですが、メンツやら色々な問題で撤退できないものですからね。
戦争を終わらせるには話が通じる相手を生かしておくというのは大事です。
総合評価
戦記物を書いていた作家さんなので、その知識を生かした作品になっています。
ラノベでこういう知識を生かした作品が少ないので、ドンピシャです。
またシュバルツスマーケンみたいなガチな作品を書いてくれるのが一番嬉しいんですけどね。
ラノベの読者層からは基本的に好かれないからな。
転生物に戦記を混ぜ合わせた珍しい作品なので、非常に面白いです。
お勧めです。